「地層処分」でよいのか
ひきつづき西尾漠さんの『放射性廃棄物のすべて』から、
「地層処分」に関する内容を抜粋してご紹介します。
すでに高レベル放射性廃棄物があるからという理屈だけで「その処分を具体的に実施することが必要である」と言うのは、問題のすりかえです。また、すでに存在するものは何とかしなくてはいけないとしても、それを「地層処分」しなくてはいけないと決めつけるのは、やはりすりかえです。
深い地層に処分したあとは、後の世代は何もしなくてよい、後世代に負担を残さないことで、現世代の責任をまっとうできるーーというのが、地層処分論です。ガラス固化体を深い地層のなかに埋め捨てれば、超長期の管理をしなくともよいというのです。
実際には、後世代にまったく負担を残さないなどということはありえないのです。地層処分が安全に実施できることは実証されておらず、処分推進の立場に立つ研究者から見てさえ不確定要素がきわめて大きいものです。
国際的に地層処分見直しの動きがあり、仮に地層処分するとしても「回収可能性」の確保が条件となりつつあります。地層処分を急ぎ、あとになって大きな自然災害や事故に見舞われたり、その回避のために高レベル放射性廃棄物の回収が必要になったりしたら、環境汚染や労働者の被曝、膨大な費用など、かえって莫大な負担を強いることになります。
引用図書:西尾漠『西尾漠が語る 放射性廃棄物のすべて』原子力資料情報室 2002年 800円
《写真はジンベイザメ/岡田充弘さん撮影》
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